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菅義偉首相による日本学術会議への人事介入に抗議する

 

 学問の自由とはなにか? それは社会から切り離された孤島に立てこもって夢想に耽ることではない。学問分野は多様であるが、いずれの学問も人類社会の福祉に貢献し、平和な社会を構築する上で欠かすことのできない基盤であり、きわめて重要な役割を担っている。ではなぜ学問の自由は守られなければならないのか?歴史を振り返ってみれば、権力に媚びることを拒否した学者や学問は、権力に恫喝され、熾烈な弾圧を受けてきた。

 

 1933(昭和8)年には、京都帝国大学の滝川幸辰教授が、共産主義的であると指弾され、同大学教授30数人が抗議して辞職した。1935(昭和10)年には、美濃部達吉教授ら19人の憲法学者が唱えた「天皇機関説」が軍部の弾圧を受け、多くの学者が大学から追放され、わが国は悲惨極まりない戦争に突き進んで行った。 

                          
 それゆえ日本国憲法は、第23条で学問の自由を保障し、権力が学問を統制・介入することを禁じているのだ。1949年に設立された日本学術会議は、その設立を決めた日本学術会議法の前文に以下のように記されている。        

                  
 「日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される。」

                 
 平和な社会の構築を目的として同会議が設立されてから今日まで、同会議の新会員人事に関して政府が介入したことは一度もなかった。だが、安倍内閣を継承した菅義偉首相は、今月はじめ、学術会議が推薦した6名の新会員候補の任命を拒否した。菅首相は、その理由について「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」と繰り返し述べ、閣僚も同一の発言を繰り返すだけで、具体的な理由は語らない。          

                 
 明治大学は「権利自由」「独立自治」を建学の精神に掲げ、「個人の権利や自由を認め、
学問の独立を基礎として自律の精神を養う」ことを使命としている。われわれ明治大学の
教職員・学生・院生は身を挺して学問・研究の自由を擁護する使命を担っている。今一度、
校歌を歌ってみてほしい。明治大学には崇高な精神が脈々と流れているのだ。学問に政治権力が介入したら何が起きるのか、深く憂慮する。      

                     
 オール明治の会が設立されたのは、安倍内閣が憲法を無視し、さらに国会での論議も無視し、数を頼みに強行採決した安全保障関連法案を阻止するためであった。あれから5年後の今、菅義偉首相を頂点とするわが国政府は、「令和の滝川事件」ともいえる暴挙を犯した。


 われわれはこの暴挙を糾弾し、日本国憲法を蹂躙する不法な決定を直ちに撤回するよう強く求める。

 

平和と人権を希求するオール明治の会

 

2020年10月12日

「平和と人権を希求するオール明治の会」へ改称するにあたって

 

 第二次安倍内閣が成立(2012 年12 月)してから今日までの5年間、わが国では議会制民主主義・立憲主義が根幹から破壊される事態となっています。安倍政権を支える自民党・公明党は、2013 年12月4日に国家安全保障会議を発足させ、 続く12月6 日には特定秘密保護法を衆・参議院で強行採決しました。同法は政権にとって不都合な情報を国民の目から恣意的に遮断し、秘密を特定する根拠を権力の判断で行うという法であり、法曹界、言論界、大学人、市民がこぞって反対しましたが、与党は審議を拒否して採択を強行したのです。

 

 2015 年9月には、国会での安全保障関連法の審議を一方的に打ち切り、何ら説明責任を果たすことなく、またもや採決を強行しました。安全保障関連法は憲法9条を踏みにじり、自衛隊に武器をもたせて海外に派遣することや集団的自衛権を合法化する戦争法であり、SEALDsに代表される多くの若者が学者や市民とともに、反対運動を展開しました。「安全保障関連法案に反対するオール明治の会」も同年7月に結成され、全国の大学有志の会ともに、反対運動に参加しました。

 

 そして2017年6月14 日、自民党・公明党は、過去3回も廃案になった「共謀罪法案」(改正組織犯罪処罰法案)の参議院法務委員会での審議を一方的に中断し、参議院本会議で「中間報告」を行うことで法務委員会での採決を行わないという異例の奇策を用いて15 日午前7時46 分に採決を強行しました。われわれ「オール明治の会」を含む首都圏28 大学・3団体が慎重な審議をするよう申し入れた矢先のことであり、法務委員会での審議打ち切りに抗議し、数多くの市民が国会を取り囲み徹夜で抗議するなかでの暴挙でした。

 

 一連の法改正の一方で、安倍首相は、憲法制定70周年にあたる2017年5月3日、改憲派の集会に寄せたビデオ・メッセージで2020 年のオリンピック開催に合わせて「憲法9条の1項と2項は残した上で、自衛隊の存在を明記する条文を加える考え」を明らかにしました。いよいよ憲法9条に手をつけようとしています。

 

 「オール明治の会」は、結成にあたり、「戦後教育は、かつて国家権力に迎合し、勉学を志した学徒にペンを捨てさせ、歓呼の声で幾十万人の若者を戦場に送り出したことを深く悔い、反省することから始まった」という不戦の誓いを出発点にしました。安倍首相によって、国民の耳や目がふさがれ政治参加も制限されかねない国、戦争できる国へひた走ろうとする今こそ、明治大学に関わる私たちは、「権利自由・独立自治」の建学の精神と大学の使命にのっとり、大学を人間性豊かな知の拠点、平和の拠点、国際性のある人権尊重の拠点とすることを希求しようではありませんか。

 

 私たちは、こうした決意をもとに、「安全保障関連法に反対するオール明治の会」を、新たに「平和と人権を希求するオール明治の会」に改めることにします。皆さまのご賛同とご支援をお願いする次第です。

                      安全保障関連法に反対するオール明治の会

 

                                  2017年10月1日

 

 

 

 

「共謀罪」法案の採決強行に抗議する

 

 与党・自民党と公明党は、6月14日、過去3回も廃案になった「共謀罪法案」(改正組織犯罪処罰法案)の採決を強行した。しかもその手法は、参議院法務委員会での審議・採択を一方的に中断し、参議院本会議で「中間報告」を行うことで法務委員会での採決を行わないという異例の奇策を用いて、翌15日午前7時46分に本会議で採決を強行したのである。法務委員会での審議打ち切りに抗議し、数多くの市民が国会を取り囲み徹夜で抗議するなかでの暴挙である。われわれ安保法制に反対するオール明治の会を含む首都圏の28大学3団体が秋野公造参院法務委員会委員長(公明党)に慎重な審議をするよう申し入れた矢先のことであり、議会制民主主義を蹂躙する暴挙に対して満身の怒りを込めてここに抗議する。

 

 これまで自民・公明両党は2013年11月に国家安全保障会議を発足させ、翌年の12月には特定秘密保護法を、15年9月には安全保障関連法の審議を一方的に取り止めて、何ら説明責任を果たすことなく強行採決した。そして今回もまた共謀罪法案を多数を盾にとり強引に採決した。共謀罪法は7月11日から施行されるが、同法は国民の内心の自由を侵し、さらに一般市民を処罰の対象とする治安維持法の復活そのものであり、対米従属を深めながら憲法改悪を目指す安倍政権の正体を白日のもとに晒した恐るべき法律である。

 

 共謀罪法案提出に対し、国連のプライバシー権に関する特別報告者・ジョセフ・ケナタッチ氏は「プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがある」と懸念を示す書簡を安倍首相宛に送付したが、これに対し政府は「内容は不適切」である、「特別報告者は独立した個人の資格で人権状況の調査を行う。国連の立場を反映するものではない」等と非難し、回答すら行わず、国際社会による共謀罪に対する警告を完全に無視した。またデービッド・ケイ特別報告者が特定秘密保護法を批判する報告書を公表したが、政府は何ら誠実な対応をとることなく国連の勧告を無視した。

 

 自民、公明両党による一連の暴挙は、思想、信条の自由を謳う憲法を徹頭徹尾蹂躙するものであり、議会制民主主義を根本から否定する行為である。安倍首相は、憲法制定70周年にあたる5月3日、改憲派の集会に寄せたビデオ・メッセージで2020年のオリンピック開催に合わせて「憲法9条の1項と2項は残した上で、自衛隊の存在を明記する条文を加える考え」を明らかにし、改憲への異常な執念を燃やしている。

 

 わが国は、人間性豊かな知を生み出すことに誇りを持つ平和な国でなければならない。戦後教育は、かつて国家権力に迎合し、勉学を志した学徒にペンを捨てさせ、歓呼の声で幾十万人の若者を戦場に送り出したことを深く悔い、反省する不戦の誓いから始まったのだ。

 

 加計問題に象徴されるように政治を私物化し、憲法9条を根幹から変え、戦争する国への脱皮を目指す安倍政権の企みを阻止し、立憲主義と議会制民主主義の破壊を断固阻止しなければならない。全ての明治大学人は、共謀罪法の運用を厳しく監視しつつ、その廃止をめざすものである。さらに、不戦の誓いの輪を大きく広げ、「権利・自由・独立・自治」の建学の精神を高く掲げ、憲法9条を改悪しようとする安倍政権の企みを阻止しなければならない。われわれは、皆さんと共に戦いの輪を広げて行くことをここに宣言する。

                  

 2017年6月15日        

安保法制に反対するオール明治の会

 

安全保障関連法案に反対するオール明治の会からのアピール

 

―明治大学不戦の誓い―

 

 安倍政権と自民・公明両党は、2015年7月15日、安全保障関連法案の審議を打ち切り、衆議院平和安全法制特別委員会で、翌16日には衆議院本会議で強行採決した。安倍内閣は、60日ルールを適用できるように国会の会期を95日も延長し、参議院で採決されなくとも、再度、衆議院での強行採決をしてでも、法案の成立を目指している。

 安倍晋三首相は、今回の安全保障関連法案を国会で審議する前に、米国政府に安全保障関連法の成立を約束し、戦後一貫して政府が踏襲してきた憲法解釈を変えることによって憲法九条を葬り去り、日本を再び戦争する国に作り変えようとしている。

 安倍内閣は、アメリカ合衆国との約束を最優先して、国民の強い反対を黙殺し、暴走をつづけている。

 

 集団的自衛権の行使は憲法上認められない。これは圧倒的多数の憲法学者の見解であり、6月4日の衆議院憲法審査会において、すべての憲法学者の参考人が違憲と表明したことに見られるように、国際紛争を武力によって解決することを放棄している日本国憲法を蹂躙するものである。

 安全保障関連法案は、日本国憲法が禁止している集団的自衛権の行使を認め、自衛隊が世界的規模で軍事展開することを容認するものである。

 

 戦後の大学教育は、かつて国家権力に迎合し、勉学を志した学徒にペンを捨てさせ、歓呼の声で幾十万人の若者を戦場に送り出したことを深く悔いて反省することから始まったのだ。また、1993年に270の全国私立大学の学長・総長が、「有為の若人たちを過酷な運命にゆだねるほかなかったことに、深い胸の痛みを覚える」とする共同声明を発表したことを思い起こすべきである。

 日本は、血を流すことが国際貢献であると考えるのではなく、人間性豊かな知を生み出すことに誇りをもつ平和な国でなければならない。学問が権力の下僕に成り下がったときに、戦争が始まるのだ。

 

 明治大学校歌にあるように、「権利、自由、独立、自治」を建学の精神とするわれら明治大学人は、安全保障関連法案に強く反対し、同法案の廃案を求める。

 

 明治大学で学ぶすべての学生・大学院生・聴講生、卒業生の皆さん、明治大学で働く教職員と退職された皆さん、さらに付属中学・高校の在校生と卒業生の皆さん、そして在校生・卒業生のご家族の皆さん、また明治大学に関わるすべての皆さん、この「不戦の誓い」の輪を大きく広げ、安保法案を廃案に追い込もうではありませんか。

 

 

                                2015年 盛 夏  

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